昨年、ある学生が財閥系大企業に就職が決まった。
このことを自慢げにクラスの友人たちに話したのだが、反応がよくない。
あげくの果てには、「お前、本当にそんなところに就職して大丈夫か」といわれ、大きな顔ができなかった。
4、5年前までだと、「いいところに就職したね」と同級生から拍手喝采されていたような企業が、いまや不安の的になっている感がある。
そんな企業に就職したら、一生涯、所得の二極化の下のレベルで生活することになるかもしれない。
デジタル情報革命が、いかに大きなインパクトをもっているかを示すもうひとつの現象は、いわゆる「日本型企業システム」の象徴であった企業系列が、急速に解消せざるを得なくなったことである。
従来の日本型システムは、基本的には情報コストを節約するためのシステムだ、と私は位置づけている。
系列によって長期的なビジネス関係を構築し、相手の技術力、販売力、経営者のクオリティなどの企業情報に関するアクセスが容易になることによって、お互いの情報を共有でき、また信頼関係もできる。
メインバンク・システムもこれと同様で、銀行が融資の可否を判断するとき、長期の取引関係があれば判断しやすい。
つまり情報コス卜の節約である。
いという直観的判断があるのだろう。
もっとも、外資系企業の厳しい選別について、学生たちが十分な認識をもっているかどうかは定かではないが。
いずれにしても、就職戦線にいる学生たちの企業観が、情報革命やグローバリゼーション進展の影響を受けて、大きく揺らいでいることは確かなようである。
戦後、経済民主化の一環としてM、M、Sといった旧財閥は解体されたが、その後それぞれの銀行が中核となって企業グループが結成され、“財閥の復活”といわれた。
各グループは主要産業をすべて網羅するワンセット主義をとり、相互の関係が緊密化し、系列が誕生した。
家とビジネスとの間の情報共有メカニズムとしての審議会の制度も、国とビジネスを普段から近づけておいて、産業政策の発動を容易にするための一手段であった。
つまり日情報革命の果実をフルにエンジョイしてきたアメリカ経済が、史上最高の好況を持続している一方、バブル崩壊の清算に10年近くを要した日本経済は依然低迷を続けている。
しかし、暗いイメージで捉えられる日本の現状も、日本人の意識が変われば、明るい展望が開けるのではないだろうか。
実際、「失われた10年」を経て、多くの日本人経営者も本的な長期継続関係の真のねらいは、情報コストの節約にあったのである。
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